【リーダー育成の第一歩】女性活躍推進には自分への思いやり(セルフコンパッション)を

少子化による労働人口減少の問題、不安的な社会変動に対応していく上で、いまや女性の労働力は欠かせません。

しかし職場での女性の役割が過去数十年で大きく変化してきた一方、依然としてチャレンジングな問題は山積みです。

ここでは性差別をすることを目的としていません。

もはや同じフィールドで働くうえで無視できない事柄として、生物学的な違いが根本にあって生じる性差を認識する必要性を取り上げていきます。

女性自身も自覚しにくいレベルの潜在的な問題が、未解決のままです。

このような状態での盲目的な女性活躍推進は、「ガラスの天井」という言葉で片付けられてしまいかねません。

女性リーダーシップ育成のファーストステップを、もっと繊細に刻んでみませんか?

この記事では、そのファーストステップとして非常に重要な役割を果たす、女性自身の「自分への思いやり(以後、セルフコンパッション)」について解説していきます。

女性リーダー育成における「ガラスの天井」問題を科学的に分析

女性活躍推進の先には、「ガラスの天井」の存在がしばしば囁かれます。

この問題の根本を理解し対策を講じるためには、男性と女性のストレス反応と対処メカニズムの違い、および社会的要因によって女性が自己批判的な傾向に陥りやすい理由を科学的な観点から捉えてみましょう。

男性と女性のストレス反応と対処メカニズムの違い

人がストレスを感じたとき、体と心は自動的に反応を起こします。

この反応は、遠い昔から生き残るために必要だった本能的なものです。

一般的に、人は大きく分けて2タイプの動的なストレス反応があります。

「戦うか逃げるか」という反応と、「ケアするか仲間を作るか」という反応です。

男性のストレス反応:「戦うか逃げるか」

この反応は、直面した問題に対して積極的に立ち向かうか(戦う)、あるいは問題から離れて安全を確保するか(逃げる)のどちらかを選択します。

例えば、職場で厳しいプロジェクトの期限に追われているとき、この反応はプロジェクトに集中して一気に仕上げる(戦う)、または一時的に離れて気分をリフレッシュする(逃げる)ことに現れるかもしれません。

女性のストレス反応:「ケアするか仲間を作るか」

一方、女性はしばしば「ケアするか仲間を作るか」という反応を示します。

これは、ストレスや問題に対処するために社会的なつながりや協力を重視する傾向があります。

例えば、職場での問題に直面したとき、女性は同僚や友人と話し合い、サポートやアドバイスを求めることで解決策を見つけようとするかもしれません。

また、チームメンバーをケアし、団結力を高めることで全体としての対応力を強化することもあります。

この違いは、職場でのストレス源に対する反応にも影響を及ぼし、女性が職場で直面する社会的な相互作用や対人関係のストレスにより敏感になることを示唆しています。

【参考文献】Taylor, S. E., Klein, L. C., Lewis, B. P., Gruenewald, T. L., Gurung, R. A. R., & Updegraff, J. A. (2000). Biobehavioral responses to stress in females: Tend-and-befriend, not fight-or-flight. Psychological Review, 107(3), 411-429.

社会的要因による女性の自己批判的傾向

さらに、文化的および社会的な要因は女性に自己批判的な思考パターンを形成させることがあります。

女性はしばしば、外見、行動、そしてキャリアの成功に関して高い社会的期待に直面しており、これらの期待に応えようとする過程で自己批判的になりがちです。

この傾向は、不安、自尊心の低さ、そして最終的には職場でのパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

セルフコンパッションの実践は、これらの自己批判的な思考パターンを和らげ、女性が自身の価値を認識し、直面する問題により効果的に対処するのを助けることが示されています。

【参考文献】

Nolen-Hoeksema, S. (2012). Emotion regulation and psychopathology: The role of gender. Annual Review of Clinical Psychology, 8, 161-187.

ではセルフコンパッションとは?

女性リーダーシップ育成に欠かせないセルフコンパッションとは

セルフコンパッションは、これらの挑戦を克服し、女性が自己価値を認識し、職場で直面する問題に対してより効果的に対処する手段のひとつです。

では、セルフコンパッションとは具体的に何か、そしてどのようにして女性リーダーの育成に役立てることができるのかを探っていきましょう。

セルフコンパッションの3つの要素

セルフコンパッションは、自己批判や厳しい自己評価に対抗するための心理的スキルです。

この概念は、自己への優しさ、共通の人間性、そしてマインドフルネスの3つの要素から成り立っています。

自己への優しさ

自己への優しさとは、自分自身に対して理解と温かい態度を持つことを意味します。

失敗や過ちを犯したときに、自分を厳しく責める代わりに、友人に対するような同情と優しさを自分自身に向けるのです。

この態度は、特に厳しい職場環境や高い期待が課される状況下で、心理的なレジリエンスを構築するのに役立ちます。

失敗から学び、自信を持って前に進むうえで欠かせません。

共通の人間性

共通の人間性の概念は、私たちが直面する困難や挑戦は、個人的な失敗ではなく、人間の経験の普遍的な側面であるという理解に基づいています。

この視点から、自分だけが苦労しているわけではなく、他の多くの人々も同様の感情や状況に直面していることを認識することができます。

その認識によって孤独感を減らし、より広いコミュニティや人類全体とのつながりを感じることを可能にします。

困難を共有することでサポートネットワークを築き、孤立感を克服していきます。

マインドフルネス

マインドフルネスは、現在の瞬間に完全に存在し、自分の感情や思考を客観的に観察する練習です。

このプラクティスを通じて、過剰な自己批判や圧倒的な感情に巻き込まれることなく、現在の感情や状況に対して冷静かつ受容的な態度を保つことができます。

たとえば職場でのストレスやプレッシャーに直面したとき、マインドフルネスは感情をコントロールし、冷静な意思決定をするのに役立ちます。

このアプローチは、職場での挑戦に対する健康的かつ効果的な対処法を提供し、女性が自己実現とリーダーシップのポテンシャルを最大限に引き出すために大いに役立つでしょう。

女性リーダー育成を成功に導く鍵

女性活躍推進のためには、女性の直面する挑戦を理解し、それに対するサポートを提供する必要があります。

セルフコンパッションの重要性を認識し、これを自己成長とリーダーシップスキルの向上に活かすことも、男性リーダー自身のためになると同時に、組織全体の人間関係の質を高めることに繋がります。

一部の人々の利益を追求するだけでなく、組織全体の革新と発展に互いの支援と理解をもって共に進むという長期的目線をもつことで、単に女性の問題としてではなく、組織全体の成長と発展につながるでしょう。

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