私たちは日々、健康的な習慣を身につけたいと考えます。
毎朝のストレッチ
食事に野菜を追加すること
夜のリラックスタイム
これらを自然に続けられるようになれたら理想的ですよね。
でも、実際にはなかなか続かない。
なぜでしょうか?
この疑問に答える鍵は、「習慣の自動化」にあります。
そして、その自動化を科学的に解明したのが、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのフィリッパ・ラリー博士らの研究です(Lally et al., 2010)。
この研究は、習慣がどのように形成され、安定化するかを具体的に示してくれています。
習慣が形成されるまでの平均期間は66日
ラリー博士らは、96人のボランティアを対象に12週間の調査を実施し、毎日同じ状況で健康的な行動を繰り返すよう指示しました。
その結果、習慣が「自動化」されるまでの平均日数は66日であることが確認されました。
しかし、ここで重要なのは「66日間」という数字があくまで中央値であり、実際には
- 最短で 18日 で自動化
- 最長で 254日 かかることもある
習慣形成にはこれほどの幅がある理由は、「行動の種類」 と 「一貫性」 にあります。
【参考文献】
Lally, P., Van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009. https://doi.org/10.1002/ejsp.674
「一貫した文脈」が習慣形成を加速する
この研究では、「一貫した文脈」 で行動を繰り返すことが自動化を促進する鍵であることが示されました。
たとえば
- 「朝食後にコップ1杯の水を飲む」
- 「帰宅したらすぐにストレッチをする」
- 「寝る前に5分間の瞑想を行う」
これらの行動は、特定の状況(朝食後、帰宅後、寝る前)に結びついているため、脳はその文脈をきっかけに行動を「自動的に」実行しやすくなるのです。
一度サボっても大丈夫
「もし忘れてしまったらどうしよう?」
こう感じたことはありませんか?
この研究では、「1回の中断は習慣形成に致命的ではない」 ことが確認されています。
具体的には
- 1回だけ行動を実行しなかった場合、習慣化に大きな悪影響はない
- 繰り返しの中で、行動を再開すれば自動化は進む
これは、完璧主義を目指す必要はなく、多少のミスは自然なことだと教えてくれます。
繰り返しによって高まる「自動性」
ラリー博士の研究は、「繰り返しによって行動の自動性が高まる」 ことを示しました。
ここでの「自動性」とは、次のような状態を指します。
①効率性
考えずに実行できる
②意識の欠如
無意識に動いてしまう
③無意図性
強い意志がなくても続けられる
この「自動性」が高まることで、習慣はあたかも「儀式」のように自然に行えるようになるのです。
なぜこの研究が重要なのか?
健康的な習慣を身につけたいと考える私たちにとって、この研究は希望を与えてくれます。
なぜなら
①完璧でなくてもよい
一度サボっても、再開すれば大丈夫。
②一貫した文脈で繰り返せば習慣化は可能
特定の状況と行動を結びつけることが鍵。
③時間はかかるが、自動化は誰にでも起こり得る
66日という数字は目安ですが、粘り強く続けることが大切です。
健康的な習慣を身につけたいと感じているなら、まずは「いつ」「どんな状況で」その行動を行うかを決めましょう。
そして、その状況が来たら毎回その行動を繰り返す。
こうして少しずつ自動化は進んでいきます。