【健康経営の新たなアプローチ】ストレスによる過食から健康を守る脳のトレーニング

企業の最大の資産は、従業員の健康と幸福です。

健康経営は単に従業員の物理的健康を維持すること以上の意味を持ち、従業員の精神的、感情的な幸福感にも重点を置いています。

この理念は、生産性の向上、従業員の満足度の高まり、そして結果的には企業の利益増加に直結します。

しかし、ストレスの多い環境では従業員に精神的圧力がかかり、さまざまな健康問題、時として「エモーショナル・イーティング」という形で現れることがあります。

エモーショナル・イーティングは、ストレス、不安、孤独感、退屈、悲しみなどの感情が原因で、自己調整の手段として食べ物に頼る行動を指します。

この行動は、感情的な空洞を埋めるための一時的な解決策として現れますが、長期的には体重の増加、不健康な食生活、さらには心の健康問題へとつながりかねません。

これらの問題が、結果的に企業全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性も存在するのです。

その対処法の一つとして有効なのが、「マインドフル・イーティング」の実践です。

これは、マインドフルネスの原則を食生活に応用したものです。

現在の瞬間に意識的に焦点を当て、食べ物との関係を改善することを目的としています。

この記事では、エモーショナル・イーティングの背景とその職場での影響、マインドフルネスとマインドフル・イーティングの基本原則と実践方法を紹介します。

エモーショナル・イーティングとは

エモーショナル・イーティングの原因と一般的なトリガー

エモーショナル・イーティングは、感情が食べる行動に強く影響を与える現象です。

この行動パターンは、ストレス、悲しみ、孤独感、または逆に喜びや祝賀の気持ちなど、特定の感情が原因で引き起こされます。

感情的な食べ方の一般的なトリガーには、厳しい仕事の締め切り、人間関係の問題、健康への懸念、または単に日常生活の圧力が含まれます。

これらの感情的な刺激によって、人は食べることで一時的な慰めや逃避を求めることがあり、その結果、意図しない食べ過ぎや不健康な食品の選択につながることがあります。

ストレス、感情、食べる行動の相互作用

エモーショナルイーティングの背後にあるメカニズムは、ストレスや強い感情が生体の食欲調節システムに影響を与えることにあります。

とくにストレスが高い状況では、体内でコルチゾールといったストレスホルモンが放出されます。

これらのホルモンは食欲を刺激し、特に炭水化物や脂肪分の高い食べ物への渇望を引き起こすことがあります。

感情が高ぶると、人々はしばしば即座に満足感を得られる食品へと目を向けがちです。

このような食べ物は一時的な幸福感や安心感を与えてくれるかもしれませんが、長期的には健康への悪影響を及ぼす可能性があります。

エモーショナル・イーティングが個人の健康と職場の環境に与える影響

エモーショナル・イーティングは、個人の健康に多大な影響を及ぼすだけでなく、職場の生産性と雰囲気にも影響を与えることがあります。

不健康な食習慣は肥満、糖尿病、心血管疾患などのリスクを高めることが知られており、これらはすべて従業員の健康不良による休職や生産性の低下につながる可能性があります。

さらに、エモーショナル・イーティングによって引き起こされる罪悪感や自己嫌悪は、職場での自信の喪失やモチベーションの低下を引き起こすことがあり、これがチームの雰囲気や全体的な業績に悪影響を及ぼすことがあります。

このような背景から、経営者や健康担当者は、従業員の健康と幸福を支援するための戦略としてマインドフルネスを用いることができます。

マインドフルネスとは

現代のマインドフルネスは、現在の瞬間に意識を集中させ、判断を下さずに経験を観察する脳のトレーニングです。

この概念は、古代の仏教的瞑想技法に由来し、近年では心理療法やストレス軽減の手段として欧米の医療業界での研究が進み、大きな広がりを見せていきました。

マインドフルネスの実践方法は多岐にわたりますが、呼吸法、瞑想、ヨガ、マインドフル・ウォーキングなどが一般的です。

マインドフルネスの基本原則と実践方法

マインドフルネスの基本原則は、現在の瞬間に完全に意識を向けることです。

これをマインドフルネス瞑想の基本となる7つの姿勢に従い、瞑想を通じて、自分の体、思考、感情に対する意識を高めることでトレーニングしていきます。

*マインドフルネス瞑想の基本となる7つの姿勢はこちらの記事で紹介しています。
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例えば、瞑想中に気を散らす思考が生じた場合、それに対して批判的になるのではなく、単に観察し、自分の呼吸に意識を戻します。

マインドフルネスのストレス管理と感情調節への影響

マインドフルネスはストレス管理において極めて有効です。

研究によると、マインドフルネス瞑想は、ストレス反応を引き起こす心理的プロセスに影響を与え、ストレス耐性を高めることが示されています。

また、マインドフルネスに基づくストレス低減法(MBSR)は、多くの臨床試験でストレスや不安を軽減させることが確認されています。

感情調節に関しても、マインドフルネスは重要な役割を果たします。

例えばマインドフルネスのトレーニングをしていると、自動的な反応性が減り、困難な感情や状況に対する適応能力を高めることができます。

これは、マインドフルネスのトレーニングにより扁桃体の反応を減少させることにより、感情の調節を促進すると示唆されているためです。

【参考文献】

・Kabat-Zinn, J. (1994). “Wherever You Go, There You Are: Mindfulness Meditation in Everyday Life”. Hyperion.

・Grossman, P., Niemann, L., Schmidt, S., & Walach, H. (2004). “Mindfulness-based stress reduction and health benefits: A meta-analysis”. Journal of Psychosomatic Research, 57(1), 35-43.

・Kral, T.R.A., Schuyler, B.S., Mumford, J.A., Rosenkranz, M.A., Lutz, A., & Davidson, R.J. (2018). Impact of short- and long-term mindfulness meditation training on amygdala reactivity to emotional stimuli. NeuroImage, 181, 301-313.

マインドフル・イーティングへの道

ここからはマインドフルネスをベースにした食との向き合い方を実践するマインドフル・イーティングという強力なツールを使い、エモーショナル・イーティングのサイクルを断ち切る方法に焦点を当てていきます。

マインドフル・イーティングの概念と実践方法

マインドフル・イーティングは、現在の瞬間に完全に注目し、食事の経験を意識的に味わう実践です。

これは、食べ物の味、香り、質感、そしてそれがもたらす感覚に集中することを含みます。

このアプローチは、食事を自動的な行為ではなく、意識的な体験に変えることで、無意識の食べ過ぎや感情に基づく食べ方を防ぎます。

実践方法としては、短めのマインドフルネス瞑想をし、食べ物を五感を使って丁寧に観察することから始めます。

一口ずつゆっくりと食べ、その味わい、食感、香りを意識します。

食事中の意識的な注意と感謝のトレーニング

さらに食事の際には、その食べ物がどのようにしてあなたの前に来たのかを感じ、食べ物に対する感謝の気持ちをトレーニングします。

農家、運搬、調理といった過程を思い浮かべることで、食事への意識が高まり、一口一口を大切にする気持ちが芽生えます。

このようなトレーニングは、食べ物への意識を高め、満腹感を感じられることにつながり、過食を防ぐ助けになります。

マインドフル・イーティングのエビデンス

科学的研究もマインドフル イーティングのメリットを支持しています。

たとえば、マインドフル・イーティングの実践が食行動、体重管理、そして感情調節に与える影響を検討した研究では、参加者が食事に対する意識を高めることで、意識的に食べ物を選び、満足感を感じやすくなったことが報告されています。

【参考文献】

・Kristeller, J. L., & Wolever, R. Q. (2011). Mindfulness-based eating awareness training for treating binge eating disorder: the conceptual foundation. Eating Disorders, 19(1), 49-61.

・O’Reilly, G. A., Cook, L., Spruijt-Metz, D., & Black, D. S. (2014). Mindfulness-based interventions for obesity-related eating behaviours: a literature review. Obesity Reviews, 15(6), 453-461.

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