「今年こそ毎日運動しよう」
「健康的に食事を整えたい」
そんな目標を立てたことはありますか?
でも、気づけば最初のやる気はどこへやら。
忙しさや日常の中で、つい忘れてしまう……。
これ、誰にでもあることですよね。
でも、そんなとき「リマインダー(通知)」があなたの味方になってくれるかもしれません。
スマホから「お昼休みに10分歩きましょう」という通知が届いたら、「あ、やらなきゃ」と思い出すことがあるはず。
では、このリマインダーは本当に行動を変える力を持っているのでしょうか?
ここで紹介するのは、「モバイルヘルスシステムでのリマインダー効果」 を検証した科学的な研究です。
リマインダーが「続けたい」を「続けられる」に変える、その理由を見てみましょう。
エビデンスの紹介
モバイルヘルスシステムでのリマインダー効果(Pirolli et al., 2017)
【文献】
Pirolli P, Mohan S, Venkatakrishnan A, Nelson L, Silva M, Springer A. Implementation Intention and Reminder Effects on Behavior Change in a Mobile Health System: A Predictive Cognitive Model. J Med Internet Res. 2017 Nov;19(11):e397. doi: 10.2196/jmir.8217.
この研究は、スマートフォンのリマインダー(通知)が健康的な習慣を続ける力をどうサポートするかを調べたものです。
参加者は64名で、以下の3つの健康習慣を目標にしました。
- ゆっくり食べる
- 歩く
- 野菜を多く食べる
28日間にわたり、参加者は2つのタイプのリマインダーを受け取りました。
- 分散リマインダー:朝、昼、夜など、一定の間隔で通知が届く。
- 集中リマインダー:短い時間に連続して通知が届く。
結果はどうだったのか?
- 分散リマインダー:行動が続きやすい。通知が生活のリズムに溶け込みやすいから。
- 集中リマインダー:一時的に効果は高いが、忘れやすい。通知が多すぎて「またか」と感じることも。
シンプルに言えば、「リマインダーは行動を続ける助けになるが、分散(一定間隔)の方が効果的」 ということです。
実施意図(Implementation Intention)とは?
リマインダーをもっと効果的に使うために大事なのが「実施意図」です。
これは、簡単に言うと 「もし〇〇したら△△する」 という行動計画のこと。
「朝起きたら水を一杯飲む」
「昼食後に10分歩く」
「夜寝る前に1分瞑想をする」
この「もし〇〇なら△△する」という形式は、行動を記憶しやすくし、実際に行動に移しやすくします。
たとえば、「昼食後にスマホ通知で『10分歩こう』とリマインドされる」と決めておくと、通知が来たときに行動に移しやすくまります。
リマインダーの効果はなぜ強力か?(ACT-Rモデル)
この研究は、リマインダーの効果を 「ACT-R(思考-合理的適応制御)」 という認知モデルで説明しています。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、実はとてもシンプルです。
リマインダーは記憶を刺激する
通知は「そうだ、やらなきゃ」と思い出させてくれます。
反復が習慣を形作る
繰り返し通知を受け取ることで、行動が次第に自然になります。
分散リマインダーが効果的
1日に何度も受け取るより、一定間隔での通知が記憶に残りやすい。
分散リマインダーは、日常生活の中で自然に溶け込み、「あ、やってみよう」という気持ちを刺激し続けます。
自己効力感(Self-Efficacy)とリマインダーの関係
この研究は、リマインダーの効果が「自己効力感」によって変わることも示しています。
自己効力感が高い人
リマインダーは「サポート」として機能し、行動を後押ししてくれます。
自己効力感が低い人
リマインダーは「きっかけ」として機能し、「よし、やってみよう」と思い出させます。
特に自己効力感が低い人には、分散リマインダーが強力な助けになります。
少しずつでも続けられることで自信がつきやすいからです。
リマインダーと習慣形成の関係
リマインダーは「実施意図(意識的な計画)」を、最終的には「自動的な習慣」に変えていきます。
習慣はこうして形作られるのです。
①意識的な行動
リマインダーを見て行動する。
②反復による記憶強化
何度も繰り返すことで記憶に定着。
③自動化
やがてリマインダーがなくても自然に行動できるように。
<実践ガイド>リマインダーで習慣を変える
ジャーナリングに応用
朝7時:「今日の目標」を書くリマインダー。
→書くことで頭を整理し、実施意図を強化。
ウォーキングに応用
昼食後:「10分歩こう」と通知。
→通知を見たらすぐ立ち上がり歩く。
瞑想に応用
夜21時:「1分瞑想しよう」と通知。
→寝る前に心を落ち着かせる。
まとめ
- 分散リマインダー(一定間隔で通知)が最も効果的。
- 自己効力感が低い場合には具体的な実施意図とリマインダーを組み合わせる。
- 習慣は「意識的な行動」から「自動化」へと進化する。
リマインダーを「ただの通知」と思わず、習慣を変える「味方」として使ってみるのも一つです。